0.

息を吸う

 

ヒナタノオトへ向かう

途中

今までの時間はずっと夢だったんじゃなかろうか

扉を開けたらパチンと夢から醒めるんじゃなかろうかと

フワフワと足を進めながら考える

 

扉を開けるとそこには昨日見た風景がちゃんとあった

よかった

そしてたくさんの人との出逢い、再会

作品もたくさん旅立ち

濃密過ぎる幸せな時間が流れた

 

吸えるだけいっぱいの息を吸って閉じ込めた

 

そして1か月前のわたしへ言う

個展までの日々は涙でも笑いでもなく熱を帯びて静かに流れ

遠くまで走っていける

その日々の先には次に向かいたい場所が見えますよ

 

 

 

※勝手にカウントダウン〜個展までの日々〜

これにて閉じたいと思います

 

次の場所へ向かいます

 

 

 

 

 

 

 

1.

開く

 

搬入を終え作品が空になった部屋に帰ってきた

 

音飛びのCDのように綴ってきた個展までの日々

もがき苦しみながらもつくる喜びに満ちた時間が溢れた

ここでひとまず扉を閉めよう

 

そして明日

空色の扉を開く

 

 

 

 

 

 

 

 

2.

外へ

 

これまで

自分の内へ向けていた目を

これから

外へ向ける準備

作品を通して誰かと出逢う幸せに遭遇する準備をしよう

でも

つくる幸せに満ちた場所から出るのは寂しいし少し怖い

 

明日はいよいよ搬入

 

 

 

 

 

3.

想う

 

最後の布を織り終えた

 

まだ

ママなんて呼ばれるのはほんとはむず痒いのだけど

どうか

冷たい風から彼女を守りますように

 

 

 

 

 

5.

企む

 

カウントダウンも5までやってきた

本当に18日はやってくるんだなという思いと

このままやってこないのではという思いがフワフワと漂っている

 

おぼつかない足元を遮るように展示のイメージをしてみる

今回はカシミヤの原毛を置いて直接触ってもらいたいと企んでいる

 

指に吸い付くようなしっとりとした柔らかな原毛

生まれたての赤子の肌のように清らか

触れば伝わるものがあると思う

 

 

そして最後になるであろう布を織っている

 

 

 

 

 

7.

灰色

 

雨で遠くが煙り立つように霞んでいる

今日の空に合わせたような灰色のストール

 

近くの空は色濃く遠くは白に近い

景色をも飲み込んでしまうような白

灰色の奥行

しばらく見とれるような冷たい今日の空模様

 

艶っぽい色

 

 

 

 

 

9.

交点

 

色と色が交わる点

 

隣り合う色が溶け合って別の色になる

 

いつもの私じゃ合わせないであろう色

冒険だった

 

時に

大胆に思い切った決断が違う側面を見せてくれる

 

繊細さと大胆さが交わる点

そこに何かがあるはず

 

展まで10日を切った

不思議と落ち着いている

なぜだろう

 

 

 

 

 

12.

 

今回青が多い気がする

 

いろんな青を楽しめた

 

いろんな青の中から自分にしっくりくるものを見つけるのも楽しい気がする

展が楽しいものになればいいな

 

あと織れるのも数枚

大切に織り上げたい

 

 

 

 

 

15.

 

赤いストールを織りながら

小さい頃の記憶が断片的に頭の中をよぎる

 

 

鏡台の前に座り引き出しを開ける

 

赤い口紅 白いおしろい 青いアイシャドウ

面白い形の道具たち いい匂いのする香水瓶

 

ワクワクしながらずっとそこに居られた

 

母の鏡台の引き出しは別世界への入口だった

 

あのワクワクをいつまでも覚えていたいと思った

 

 

 

 

 

17.

 

風が吹いて小さな波ができる

 

波たつことで影がつき

透明な白と濁りある白とができる

白が美しいのは隣に濁りある白があるから

 

 

 

 

 

 

18.

積る

 

少しずつ薄紙を重ねるように少しずつ

作品が積っていく

 

ただ積み上げるだけでなく

層となり

厚みとなって

積っているか

 

 

 

 

 

20.

揺らぎ

 

一日とんだ

それもリアルな感じで良しとしよう

 

青のストールは縮絨すると良い感じに化けた気がする

深みのある青

揺らぎのある青

止まっているようで

動いている

凪のような布

 

 

 

 

 

 

22.

 

密度のあるものの次はプレーンなもの

そういう波がある

 

凪のように静かで穏やかで

奥行きのある布

深く潜っていけそうな

静かだけど力強い

 

飾りのないものほど難しい

 

 

 

 

 

 

23.

 

昨日縮絨した布を再度干す

乾燥した温かい空気が布を通り抜けていく

 

縮絨を強めにかけたのでいつもより柔らかい

本当に羽に触っているような感触

そして軽い

 

きっととても似合う人の元へ行ってくれそうな気がする

 

いい表情に仕上がった

 

 

 

 

 

 

24.

輪郭線

 

織り上がった布を縮絨する

お湯につけ 揉み込んでいくうちに

輪郭線が消えていく

色と色が混ざり合い線から面へ変わっていった

 

どうかなという気持ちがあったので

仕上がった布の表情を見て

重たい気持ちが軽くなる

小さな作品だけどちゃんと密度がある

ほっとした

次に織るものは決まっていた

あの空間に並んでいる姿が見えている

 

新しい技法を使って

想像する質感にどれだけ近づけるか

不安と期待が入り混じる

 

 

 

 

 

25.

滲む

 

続きを織る

今日もあと数時間

今日中に織り上がりそう

 

縮絨を強めにするといい表情になるかもしれない

 

高校生の頃に通っていた画塾で

パネルに紙を水張りし イーゼルを立て デッサンしていた時の事が何度も浮かぶ

 

何かを掴まえようと必死だった記憶が滲みだした

 

あの頃とあまり変わっていない

掴もうとすると遠くなる

 

 

 

 

 

 

26.

美しきもの

 

朝少し手を動かす

そのあと支度して出掛ける

 

美味しいものを食べて

渋谷のPOSTALCOへ

プロダクトもさることながら

見せ方が美しい

モノの背景が見える展示

いつ来てもいい

 

その後

銀座の資生堂ギャラリーへ

会期残り3日にして駆け込んだ

「そばにいる工芸」

決して広くない空間に美しいものが点在する

それに加えて5分30秒の映像が対になって壁面に流れる

音は無く6人のアトリエとその中でものつくる人が動く

 

美しい

動けなくなる

道具や機材 材料で溢れるアトリエも美しい

でもモノつくる姿が一番美しかった

 

一本のショートフィルムを見終えたように

大きく息を吸ってその場をあとにする

 

まだあの空気が体の中に残っている

 

 

 

 

 

27.

曇天

 

どんよりとしている

今日のわたしを見透かすような空

 

昨晩なんとかなんとか形にして

今日から糸の準備

…よかったのかどうか

本当のところわからない

 

今日の空模様のように陽が射すことはなかったように思う

 

明日は少し気分転換をしよう

 

 

 

 

 

 

28.

 手が止まる

 

大きな作品が織り上がる

機からおろし修正をし縮絨

 

 

織り上げたところで次に進めない

手が迷う

少しずつ出てくるものを掴まえようとしたけれど

それは芯ではない気がするから

手を止めた

 

スピーディーに手を動かそうと思えば動かせる

でも止める

ほんとうに芯から出てくるまで辛抱

そこを急いではただのリピートになってしまう

 

そんな日もある

いつも全力では走れない

長く走るために

 

 

 

 

 

 

29.

 疾走する

 

本日快晴

空気も乾燥し陽射しも力強い

 

織り上がっていた布2枚を縮絨する

こんな日は縮絨日和

 

DMのデータを頂く

自分の作品が大きく写っている

いよいよだ 背筋が伸びる

 

今日は何かスムーズだ

いつもより走りやすく進みやすい

何にも邪魔されずに手が動く

 

こんなことは珍しい

 

この一枚も今日で仕上がってしまうんじゃないかな

今日は遠くまで走った気がする

 

 

 

 

 

30.

 countdown start!

 

本日より個展(11/18スタート)までの1か月の日々をカウントダウン形式で綴ろうと思います

「勝手にカウントダウン」

 

ここまで長く走ってきてラスト1か月

何を思いどう動くのか もしくは追い詰められるのか いやはや涙ありなのか それとも笑いで締め括るのか

その先にあるものが今はわかりませんが

実験的なこころみを記録しようと思います

 

 

今日という日はある意味結界的なラインである1か月を切ったわけで

焦りや不安も入り混じる中

心理的にはラストスパートをかけるべく張り切ってクラウチングスタートをきる

 

ここで時間に負けてはならぬと

 

残り時間が見えてきた今だからこそ労力はかかってもつくりたい作品に挑もうと

数を揃えるためのものつくりになってはならぬと繰り返し

練り直し練り直し

皆が寝静まる中

練り直し

今日から新しい作品の糸に触れる

 

あと1か月ではなく まだ1か月

 

皆川さんの言葉を借りて言えば

今日から「できない」のスイッチを切る

 

がんばれ わたし

まけるな わたし